ストーリー
囲われる日々は終わる。
        
        なにひとつ知らなかった。
                ただただ、無知だった。
        
        今まで散々危ない目には遭ってきたけど、
                今回のそれは明らかに毛色が違う。
        
        町に蔓延る不可解な者たち。
                ――――彼らは本当に存在しているのか?
        
        すみれはクールに言った、「あたりまえにそこに在るもの」と。
        大和はつぶやくように言った、「友達みたいなものかな」と。
        遥はかわいらしく言った、「いるものは仕方ないよね」と。
        えくちゃんは酒に溺れながら言った、「それより酒だー!」と
        ポコはじゃれるように言った、「ぽこぽんっ」と。
        葉月は遠慮がちに言った、「向き合うべきもの」と。
        マスターはきざったらしく言った、「真理だ」と。
        キツネと名乗る男は仏頂面で言った、「妄想や幻覚の類なのかもしれない」と。
        ツバメと名乗る男は軽快に言った、「ひとつの可能性」と。
        
        みんなそれぞれ違う解釈を持っていた。
        
        オレはと言うと……
        なんでも良かった。
        在るがままに受け止めて、起こるがままに流される。
        そういうやつだった。
        
        欠如していた。
                ――――自分の意志というものが。
        
        それでも選ばなければならない時はくる。
        真実を知って、なにもかも背負って、どれを選んでどれを捨てるのか。
        
        そんな岐路に立たされた、
        
        高校3年生――――
                たぶん、最初で最後の青春。
        
